例えば瓦礫を積み上げるようなものだろう。

過去を取り戻すという作業はそれぐらい途方もない。

決して元に戻らないものだし、戻そうともがいたとしてもすぐに崩れ落ちてしまう。

”洋太の言うとおりだな…”

圭一は結衣と部屋に戻り、そんな事を考えていた。

自分のしようとしていた事はとても無為なものだし、何も築かないと言うことを。

洋太にそんな様な事を言われて、多少イラついたりもしたが今なら分かるような気もした。

”あいつの言うとおり、未来なんだ”

過去と未来の線分を考えても、確かに過去はそこに”あった”かも知れないが、これから”ある”のは他でもない未来なのだ。

過去の結衣は確かに話す事が出来た。そのひとつひとつは掛け替えのないものだ。

しかしそれは過ぎた言葉で、例え今の結衣が話せたとしても、同じ言葉を発する事などできない。

どちらにしても取り戻すことなど出来ないのだ。