「あのさあ」

洋太が少し困った顔で話しかけると、菜緒は泣きながら洋太に向いた。

「あんまり、大きな声で泣かれると、俺がなんか勘違いされるみたい…」

確かに、行き交う人の視線が冷たい。中にはコソコソと言い合っている人もいる。

菜緒は、洋太にそういわれると、泣くのをやめて背筋を伸ばした。それでも滲む涙は、その都度強く拭い取った。

そんな菜緒を見て洋太は微笑む。

いつでも。何をやっても。等身大の菜緒は、感情ですら反射神経にコントロールされてるかのようにその時思った事を行動に移す。

それは、見ている側にも心地よい。

「神木さんのそういうところ…」

凄くいいと思うよ。

菜緒には何の事だか分からなかったが、サラリと言われて、今度は照れてうつむいた。

「出会った後。その後はどうなったの?」

菜緒に促されて、洋太は思い出したように話しの続きを始めた。