「もしもし」

途方にくれたまま話始めると、紗梨奈は少しビックリしたように答えた。

「やっとでてくれた。お久しぶりです」

”やっと?”あまり実感がなかったが、そういえば、ここ数日紗梨奈からの着信を無視していた事を思いだした。

「ああ、久しぶり。どしたの?」

携帯に出てしまった事を少し後悔しながら圭一は素っ気なく答えた。

「飲み行きません?」

掴んだ獲物は離さないとばかりに、紗梨奈はイキナリ誘ってもきた。

あるいは、圭一の心の中にできた、ちょっとの隙を見逃さなかったのかも知れない。

「別にいいよ」

圭一は何も考えず答えた。

「行こう。今から。どうすればいい?」

「実は…」

近くにいるのだと、紗梨奈はいった。

どこまでも用意周到だ。と思ったが、圭一はただ紗梨奈にしたがった。

言われるままに、紗梨奈と会うために部屋をでた。