スケッチブックを拾ったことで、今朝は圭一を見失ったが、菜緒は好都合だと感じていた。

もちろん、返すことで話す口実ができたから。

”「これ、落としてましたよ」「ありがとう」「いえ、こちらこそこの前は…」”

これだけでなく、その他にもいくつものパターンが菜緒の頭の中で繰り返された。

入念に行われるイメージトレーニングは、どこまでも菜緒をその気にさせた。

”よおし、捜すぞ!”

良いイメージでいっぱいになった、少し痺れた頭を抱え、菜緒はいつものレーダーを働かせた。

”見つけた!”

秒殺……。自慢のレーダーで見つけた圭一は、洋太と一緒にいた。

”ケンカしてる?”

遠目にみると、二人は言い争いをしている様に見えた。

ソロリと近づこうとすると、何やら言って圭一は立ち去ってしまった。

「あっ!」

声に気付いてか、洋太が振り返った。

目が会って会釈を交わした。