最近、圭一は視界の中に菜緒をよくみつける。

不自然なくらい、菜緒は圭一の視界の中に現れる。

そして、その度に圭一は逃げる。目でも合わせたら大変たと感じていたから。

今朝もそうだった。

朝の混み合ったホームの人混みの中で、容易に菜緒の姿を見つけた。

見つけて直ぐに背を向けた。

”なにも、意識しなくたって…”

自分で自分をたしなめてみても、その割りにはこれぐらいが調度いいのだとも認めていた。

意識して遠ざける事をしないといけないと、圭一は感じていたのだ。

でも、それは半分認めてしまっているようなもんだった。

菜緒の事を気にしてしまっていることを。

”熱くならないんじゃないのか?俺は?”

今までどんな女の子と遊んでも、ただの気晴らし程度で、そこまで意識して遠ざけるような事はしなかった。

それなのに、今圭一は菜緒の存在を消し去る事に一生懸命だ。