菜緒は、圭一と握りあった手の温もりを思い返している。

”あったかかったなあ”

こうやって何度も思い起こしては、ニヤケている。

”どうしようかなあ…”

そしてその度に、こうして落ち込んでいたりもした。

”ハア…”

結局、最後はため息になる。

圭一と初めて話したあの日以来、ずっとこの調子だった。

菜緒はとっくに気付いていたが、完全に圭一の事が頭から離れなくなっている。

その事を認めていいのか悪いのか、それだけが悩みの種だった。


菜緒は自己紹介をするとき、自分の事をポジティブだと言ってしまう。

別に、悩む事をしないわけじゃない。

悩む事が嫌いだからこそ、こう言うのだ

それがこの悩みよう…。

今の場合、圭一に彼女がいても突っ走るべきか、キレイにあきらめて次に向かうべきか、それが菜緒の悩みだった。

考えて見れば、どっちもポジティブではある。