”また女の人と一緒だ…”

菜緒は、駅のホームで女性と歩く圭一を見つけた。

いつものクセで、その姿を目で追っていた。

”あの人…”

しばらくして、菜緒は自分が勘違いをしている事に気がついた。

そして、自分を恥じた。

圭一が連れている女性は、杖をついている。

歩きかたからして目が見えないようだ。

圭一は、その人を階段まで誘導していた。

”なんだ”

そういう事だったのか。と思い直す反面、少しでも圭一に対し軽蔑を向けた事を申し訳なく思った。

ひとごみを、それこそ泳ぐようにスイスイと誘導している姿は、とても慣れているように見える。

”スゴイ。えらいなあ”

自分だったら…。

同じように出来ただろうか?

出来るかどうか考える前に、今まで気にもしなかった事に菜緒は気付いた。

”私は…”

誰かを助けるとかをしようとも思ってなかった。