海とかプールとか…。

せっかく夏だし、そんな楽しみ方をしてもいいのかもしれない。

圭一は結衣の事を思う。

”結衣と行けたら…”

でも、それは出来ない。

一緒に住みはじめて、結衣は一歩も外に出ていない。出る事が出来ないのだ。

しゃべれなくなっただけなく、人に会うことが出来なくなってしまったのだ。

結衣にとっての全世界は、あの小さな部屋とそこに暮らす圭一だけ。

結衣はただそこにいる。

圭一は結衣がそうしたいのであれば、全て受け入れるだけの覚悟があった。

そうしなければならない責任があるとも…。

結衣をあんな目に合わせた事。結衣をこんなふうにしてしまった事。

圭一は、その全ての責任が自分にあると思い込んでいたのだ。

”お前苦しそうだよ…”

洋太のそんな台詞も、圭一の悲痛なまでの覚悟を見て取っての事なんだろう。