やがて何人かの駅員が駆け寄ってきて電車から人を遠ざける。

圭一はすぐに立ち上がる事が出来ずに、その場に座り込んだままだった。

駅員は慌ただしく辺りを駆けずり回り、何だか大声で叫んでいる。

笛やら声やら。

騒音にしか聞こえないそれらの音を、圭一はあの雪山の風の音に重ねていた。

”守れなかった。また”

後悔とか失望がその音に掻きむしられる。

”いっそ俺だったら”

結衣も菜緒も。自分の存在なんかと引き換えに取り戻せる事ができるなら…。

ケチな事言わずに、1回くらい時間を戻してもらえないだろうか?

それが出来るなら、自分の体なんていくらでもくれてやるのに。

”ガコン”

その時、途方にくれる圭一の目の前で、電車がゆっくりと動き出した。

目の前に立ちはだかっていた、大きなジュラルミンの壁がどけられると、線路の向こうにまた別のホームがある。

そのホームに、結衣が立っていた。