「うあああああ！」

激しいブレーキ音の後に圭一の悲鳴が響き渡る。

回りにいた人に羽交い締めにされて、圭一は電車から引き離された。

ジタバタと暴れてみても、実際は頭の先から爪先までの血液が全部消え飛んでしまったようで力がでない。

結局、圭一はその場に座り込んでしまった。

圭一の右腕に激痛が走る。

菜緒の手を掴もうと伸ばした手は、それをすることが出来なかった。

顔をしかめながらその手をみると、その腕には手首から先がなかった。

「ああ…」

取り戻したはずの記憶の中から、更に埋もれたカケラがこぼれ落ちた。

”俺はなんてマヌケなんだ！”

自分が失ったはずの右手の事を今の今まで忘れてたいたなんて。

もし、自分がちゃんとその事に気付いていたなら、菜緒の手を掴む事が出来たのに。

そう考えたら、体中がガクガクと震えだした。