「ちょっと、キミ!」

帰る途中、菜緒は急に呼び止められた。

振り返ると、そこには天野洋太が立っている。

「天野君?!」

菜緒は、慌てて周囲を見渡す。

「圭一ならいないよ」

気持ちを見透かされて、菜緒はどうしていいかわからない。

「な、何?!」

「名前は?」

「は?!」

「名前?」

「神木…」

「神木?」

「菜緒です」

知っていたとはいえ、ほぼ初対面。なのに名前を聞かれて素直に答えてしまった。

「学科は?」

「なんで?!」

「学科?」

「英米文だけど…」

突っぱねるつもりが素直に応えてしまう。

「あの…これ何?」

やっとの事で、菜緒が切り出したが…。

「俺は天野洋太。よろしく」

知ってる。しょっちゅう見てる。

「実は、神木さんに聞きたい事があってね」

そういうと洋太は、グッと菜緒の瞳の中をのぞき込んできた。