呆れるくらい前向きだったら救いようがない。

その場の感情に流されたっていいことなんてあるはずない。

だけど菜緒は、またこんな選択をした。

それは、どこをどうとったって菜緒の選択なのだからしょうがない。

傷つく事もできないし、忘れる事もできない。

恐らくは、傷つける事も、忘れさせる事もできない。

でも、そんな全てが菜緒にとってはどうでもいい。

菜緒は自己紹介をするとき、自分の事をポジティブだと言ってしまう。

だったら、たまには言葉通りにしてみようじゃないか。

「天野君。私は波多野君の事が好き」

「うん、この前聞いた。」

「だから、今から会いに行こうと思う」

「そうしなよ」

「うん。それじゃあ」

「それじゃあ」

菜緒は、立ち上がるとスッとその場を離れた。

そして、自慢のレーダーを奮わせながら圭一のもとへと向かった。