「結局のところ、結衣ちゃんのいない穴を埋めるのは、結衣ちゃんでしかなかったんだな」

洋太は誰に言うでもなくこぼした。

確かにそうなのかも知れない。

圭一の気持ちはどこまで行っても”結衣”に捕われている。

それを縛るのも、ほどくのも、答えは全部結衣なのかもしれない。

圭一はこれからも、どんなときも、心の底に結衣の温もりをあたため続けて行くだろう。

いつ暴れ出すか分からない熱を抱えて生きるのだろう。

この訳の分からない熱は、決して消える事が無いからとても厄介だ。

”でも…”

菜緒は、思う

”それは、きっと自分もだ。”

菜緒は、自分も圭一と同じ熱を持っている事を知っている。自覚している。

「波多野君と会いたいなあ」

なんの脈絡もなくこぼれた菜緒のひと言に、洋太は思わず笑って応えた。

「会いに行きなよ」

無責任な返事に、今度は菜緒が笑って応えた。