昔と変わらないその家は、今でもそこにあった。

しかし、変わらないのはその外見だけで、家全体はどこか悲しみを帯びたように、様変わりした印象を圭一に与えた。

その悲しみは圭一を責めているようだった。そのたたずまい全部で圭一を拒絶していた。

圭一は動く事が出来なかった。

自分が無くしてしまった物の意味を身体全体で受け止めて身体がかたまってしまったのだ。

”結衣に会う”

その事を強く思うと今度は身体がガタガタと震えた。

じれったくもあり、情けなくもあり、圭一は唇をきつく噛み締めた。

その時、結衣の家のドアが開いた。

中からは、結衣の母親が現れた。いつも優しく笑いかけてくれたおばさんは、ゲッソリと痩せてしまっていて、その姿が圭一の胸を更に締め付ける。

「ああ、やっと来たね」

おばさんは、力無くつぶやくと圭一へと歩みよる。

そして圭一の後ろにまわると、背中を”ぽん”と軽くたたいた。

それはまるで魔法のようで、圭一はその勢いでスッと前に進んだ。