「暑い!」

圭一は慣れないネクタイを緩めながら、茹だるような暑さにぼやいている。

「なんだって、こんな真夏に結婚式?!」

「先輩、デキちゃったって」

圭一の横で洋太が応えた。

結婚式をやるにはギリギリな時期だという。

「それにしたって…」

気温38度。

そんな猛暑の中、ご丁寧に新郎新婦の登場を外の階段で待ち続ける。

通り過ぎる人達は極めて軽装だ。

「うらやましいですよ…」思わず圭一はつぶやく。

ホントなら海にでも行きたいところ。ここにいる誰もが思っていた。

おめでたいはずの結婚式。軽い気持ちで立ち止まった人達は、物凄い形相で睨まれる。

辺りは、極めて異常な事態に陥っていた。