「はぁ…」



「コラッ!!」



「っ!!」



本日最大のため息をつき、再びレジカウンターに突っ伏すあたしの頭を箒の柄で小突く由奈。



「そんなため息ついてたら、幸せ…全速力で逃げてっちゃうよ?」



逃げるもなにも…



「逃げてっちゃうような幸せのないあたしには関係ないもん…」



そーだよ。



逃げてく幸せも持ち合わせてないあたしには、そんなの関係ないもん。



「あんたねぇ…」



「幸せ…欲しいよぅ。」



あたしは呆れたように呟く由奈を見ることなくポツリと呟くと、ギュッとブラウスの袖を掴んだ。



「………幸せに…なりたい。」



「……杏奈。」



そして、ジワリと滲む涙を拭うようにゴシゴシとブラウスに顔を擦り付け、再び大きなため息をついた…



瞬間、



カランカラン…



「…いらっしゃいま…っ……あっ……」



「いらっしゃ……」



「お前さぁ…サボんならもっと上手くサボれよ。」



「へ?」



「ってか、バイトならバイトらしく、時給分ぐらいはチャキチャキ働けっ!!」



ベシッ!!



「っ!!」



バッと勢いよく顔を上げたあたしの視線の先には、悪戯な笑みを浮かべる先生がいた。