月の夢

『月の夢』もそんな作品だった。

主人公はどこにでもいそうな十七の少女で、

そこに描かれているのはありきたりな恋や女の子同士の友情の話。

ただひとつ特殊なのは主人公が年齢を重ねないということ。

高校二年生を何度も繰りかえし、

四月を迎えると彼女に関する記憶は整合性が合うようにリセットされてしまう。

時間の流れに取り残され、かつての級友に忘れ去られていく

(と言っても本人も覚えていないのだけれど)

のが哀しくてせつなくて、読んでいてあたしは少し泣いた。