月の夢

「いい本だよ、それ。

夢村先輩も絶対好きになると思う」

本を手渡してくれた篠原くんは目を細めてにっこりと笑う。

おたがい別々の高校に通っている今も先輩と呼ばれるのは、なんだかくすぐったかった。

「篠原くんがそこまで推す本なら期待しちゃうな」

本を抱えてあたしは素直に言った。

「今度会ったときにでも感想聞かせてよ」

「うん」