月の夢

「どうかした?」

空を仰いでいた篠原くんが驚きの表情をうかべてあたしをみる。

「ねえ、あたしを篠原くんの作品の読者にしてくれないかな。一番最初の」

「うん。約束する」

篠原くんは言った。

「ありがとう。先輩に話せてよかった。

なんだか胸のつかえが取れた気がするよ」

「どういたしまして」

図書館には、いろんなひとの想いがつまっている。

本を書いたひとの、それを読んだひとの。

もちろん、あたしの想いも。

いつか篠原くんの書いた、あたしが最初の読者になった本が図書館に並ぶといいな。

それは些細な、けれどとても大切な夢。