月の夢

「愕然? どうして?」

「上手なんだ、すごく。

プロになるひとは素質からしてちがうんだなって思った。

僕なんかじゃ、到底ああは書けないよ」

なんて言えばいいのか、すぐに言葉は見つからなかった。

問題の作品は読んでいないし、

篠原くんの書いた小説も読んでいないから、

的確なことを言うのはむずかしい。

でも、あたしに『月の夢』を勧めてくれた感性は確かだと思うし、

その篠原くんが「到底ああは書けない」と言うのだから、

それも嘘ではないのだと思う。