月の夢

「ごめんなさい。あんまり考えたことないみたい」

「そっか」

「篠原くんの夢は?」

「小説家なりたい──って言ったら笑う?」

「笑わないよ」

「ありがとう」

穏やかに篠原くんは笑った。

「小説家になるとかならないとかは、実はそんなに関係ないんだけどね。

もちろん、なれれば嬉しいんだけど。

ただ本を読むのが好きで、だから自分でも書いてみようと思ったんだ。

でも、『月の夢』の作者の──さっき渡した本に載ってる作品を読んで愕然とした」