月の夢

『月の夢』の作者さんが他にどのような作品を書いているのかは気になった。

恋に落ちるかどうかは分からないけれど、きっと素敵な本なのだろう、想像するだけで心が躍る。

「あ、でもデビュー前の作品をいくつか持ってるよ。

同人とかネットで公開してた作品とか。

読みたいなら貸してあげるよ」

「ほんと?」

「うん。先輩ならそうくると思って実は持ってきてあるんだ」

「やた。さすが篠原くん」

篠原くんは鞄の中から薄い本を数冊とクリップで留めた紙の束を取りだして、あたしに手渡してくれた。