「人は…描けない」


震える声で言う。


「はぁ?
なんで!?」


描かない、じゃなくて描けない。

あのときを、思い出すようで――



怒ったような口調の葉。


怖い…


「別に、葉には関係ないでしょ!?」


その怖さを振り切るつもりで出したその言葉。

気づいたときには遅かった。


あたしっ…!!

「んだと…?

人にさんざんあれこれ言っといて
自分はそれかよ!?」


わかってる。

自分勝手だって…

葉が怒るのも当然だって。

でも…

他の誰より葉に言われたのが悲しかった。




「葉には…

葉にはわかんないよッ!!」

それだけ言ってあたしは走り去った。