「ん?」

「なんで逃げた?」

黒沢は睨みながら言った。

「…は?」

あたしは黒沢の言ってることが分からず、間抜けな返事をする。

「なんで美術館から逃げた?

あのままにすれば、俺と黒沢京が親子だとわかって
俺は、学校とかじゃ噂の的になり、
お前は、自分の絵をぐしゃぐしゃにした奴を嘲笑える。

なのに、どうして逃げた!?

同情か!?
同情なら…いらない」

辛そうな表情で話す黒沢。



……。

「何言ってんの?

同情?あんたに?

するわけないじゃん。」

あたしは、半分あきれながら言う。

「じゃあどうしてっ…」

「あの絵のため」

黒沢の言葉をさえぎりながら、はっきりと言う。