「先生、先生は外の世界をよく知ってる?」


「・・・貴族の外の世界、という事ですか?」


私は頷いた。


「そうですね、私は貴族ではありませんから」


先生は笑顔で答えた。


何故先生は、いつも笑顔なのかしら。


「先生、外の世界は苦しいのでしょう?辛くはないの?」


「お嬢様は、とても珍しい事をお尋ねになられますね」


私は、そうなの?と首を傾げた。


「はい、少なくともご令嬢で平民の様子を気になさる方はあなた様が初めてです。」


そうでしょうね。
舞踏会に夢中だもの。


私は窓の外を見やった。


「お嬢様はいつも、窓の外を眺めてらっしゃる。知りたいですか?外の世界を。」


私は先生に視線を移して、小さく笑った。


「普通の令嬢のように、舞踏会や宝石だけしか知らなければ、どんなに楽か・・・
でも私は、そんな風にはなりたくないの」


貴方は静かに私を見つめた。