金髪の君*完結




「じゃぁ、頑張りなさいね。」


「うん。」


玄関に座りパンプスを履く私は、後ろに立つ母に顔だけ向け頷いた。

5つ県が離れている大学に通う予定の私は、大学近くのアパートに一人暮らしをすることになった。
そして今日がアパートへ引っ越しする日。

結局、心へ引っ越すことを伝えられなかった私はそのまま引っ越すことになった。

メールにしようかと思ったが、仕事中の心に送るのを躊躇した私はそのまま夢の中へ。


「はぁ…」


起きた私を待っていたのは作業服に身を包んだ引っ越し業者。

寝癖にスエット姿の私は寝ぼけながらダンボールや家具を運んで貰うようお願いした。



--タイミング悪すぎる…


自分のタイミングの悪さに嫌気がさす。

溜め息を吐いた私に


「寂しいのは今だけよ。」


母はニヤニヤ笑った。


「えっ?」


キョトンとする私は母の言葉が理解できなくて頭を傾けた。



「あっち着いたら沢山のダンボールが待ってるわよ。
寂しいなんて思ってる余裕すら無いから。
頑張ってねー。」


「う、うん…頑張る。
いってきまーす。」


母のニヤニヤ笑った顔は私が玄関を出ても変わることはなかった。