頭を抱えている手をそっと離し、携帯に視線を向けた。
待受画面をポケーッと見続け
「--桜…」
携帯から視線を窓に移した。
いつの間にか窓の外は夕日に染まっていて、私は外が暗くないことを確認すると
「葵!!?」
母の声を背にマンションを飛び出した--…
コートを着ず、部屋着のパーカーにジーンズ姿のまま走る。
「--はぁ、はぁ…」
卒業し外は寒いからと家でだらける毎日。
体力が落ちた私は、息が上がるのが早く、額にはうっすらと汗が滲んでいる。
「--はぁ…つい、た…」
目的地に着いた時には夕日は沈みかけ辺りは薄暗い。
私は「はぁ」と息を整え、目の前にあるフェンスに手をかけた。
緑色のフェンスに手と足をかけ上る。
小さい時に上った記憶が蘇り、懐かしさを感じながらフェンスを上りきった。
「--よい、しょっ」
掛け声と共に、地面に飛び降りる。
「---っ…」
3メートル程のフェンスの上から飛び降りた瞬間、足がビリッと痺れる。
負傷はしていないが、痺れが治まるまでしゃがみ込み足を摩った。

