「っで、話ってなんだ?」


腰に回している腕を離した心は、立てた膝の間に私を向かい合ったままの状態で収めると満足そうに笑った。


「あ、あのね…」


「それ聞いた。」


「桜色の糸って…」


「それも聞いた。」


意地悪い笑みを向ける心に、ムッと顔をしかめた。



「もういい!」


頬をプクッと膨らませ、心を睨む。


「ふはっ」


噴き出した心は「わりぃ、わりぃ」と言い、私の頬を撫でた。

心に頬を撫でられるのが好きな私は、すぐに機嫌が直ってしまい


「単純」


と心に言われても、図星な私は言い返すことができない。



「っで、続き。」


心の言葉に


「なんで桜色の糸があるの?」


邪魔されないように、一気に言った。


「あー。」


私から視線を逸らし、頭をガシガシとかく心を下から見上げ見る。


「あー。」


二度目の「あー」の後に、チラッと私の顔を見た心は


「まぁ、あれだ、その、うん。」


恥ずかしそうに制服のポケットに手を突っ込み、取り出した物を私の手に乗せた。

左手に乗せられた物に視線を向けると


「あっ…刺繍糸…」


束になった刺繍糸があった。

小指に付いている糸と同じ、薄いピンク色の刺繍糸に笑みが溢れた。