意識を失った飯塚を軽く蹴り、背を向け


「おめぇら帰るぞ。」


泰と陸斗に声をかけ、しゃがみ込んでいる私へと向かって歩く健吾。



「葵、へーきか?」


心との殴り合いで、腫れ上がった顔で優しい笑みを漏らす健吾。


「け、健吾…ごめ、…-さ、い。」


「あ?」


「私、かずくんを殴ったの健吾だと思ってた…」


「あー、俺が言わなかったのがわりぃーし気にするな。」


目の高さを合わせるように、しゃがんだ健吾は私の頭をポンポン叩いた。



「葵…」


「えっ?」


叩いていた手を止め、頭に手を置いたまま真剣な表情で



「別れよ。」


呟いた。



「えっ、けん…」

「お前を縛るものは何もねぇ、あいつらを出しに脅して悪かったな。」


「……」


「だから別れよう。」


繰り返された言葉に私は何も言えなかった。

この2ヶ月のことが頭を過り、胸が苦しくなった。

目頭に涙が溜まった私に


「流すな。」


と言うと目を手で覆った。


「もう、涙も拭えねぇ。だから俺の前で泣くな…」


悔しそうに言う健吾の声に、涙が溢れてきたが



「もう平気!!」


涙を流すことなく、健吾の手を目から離し笑顔を向けた。




「健吾、ありがとう。」


「あぁ。」



私達の関係は今、終わりを迎えた--…