「大西 泰孝(オオニシ ヤスタカ)。」


肩を落としたまま、小さな声で呟いた泰に


「大西泰孝くん、宜しいね。」


笑顔を向けた。



「よかったな、泰。
最後に…--「陸斗。」」


陸斗の声を低い声で遮った健吾。


「あっ、わりぃ…」


「ねぇ、最後って何?」


陸斗に聞いたはずが


「何でもねぇ。」


有無を言わせない健吾の目に、もう聞くことができなかった。
私はただ、黙々とご飯を食べつづけた。



「来たぞ。」


お弁当の中身が空になり、残りの休み時間を泰とふざけ合っていると、窓の外を見ていた陸斗が振り返った。

陸斗の視線は健吾に向いていて、お互い真剣な眼差しだ。


健吾は、陸斗から視線を窓の外に向け



「マジで1人で来やがった。」


ハッと鼻で笑った。


「何が来たの…?」


窓際に座る健吾の肩越しに、窓の外へと視線を向けた。



---えっ…



「な、なん、で…」


心臓が早い速度で脈打つ。


「葵、行くぞ。」


席を立ち、私の腕を引き歩きだした健吾。