車の中で口を開こうとしない健吾は、目を閉じ動かない。
私は窓の外を見ながら、心の言葉が頭を過ぎり忘れようと格闘していた。
ついさっきあった出来事を忘れることができるはずもなく、車はマンションへと着いてしまった。
「葵、着いたぞ。」
「あ~、うん…」
窓から視線を向けたまま、気の抜けた返事をする私に
「いたっ!」
健吾は私の腕を強く握り、車から引きずり降ろした。
強く握られた手は、「痛い!」と悲痛の声を上げると弱まった。
手を引き歩く健吾はいつもより速く、私は小走りで着いて行った。
オートロックを解除し、玄関のドアを勢いよく開け健吾は靴を脱ぎ捨てた。
「えっ!靴!脱いでない!!」
自分だけ脱いでさっさと部屋へ上がった健吾。
手は繋がれたままで、靴を脱ぐひまも無かった私は靴のまま廊下を歩いた。
健吾はリビングのドアを開け、ソファーに鞄を投げると靴を履いたままの私を連れ自分の部屋へと入った。
私の後ろでパタンッと閉まったドア。
不意に振り返った健吾は、私を担ぎ上げ
「--きゃっ」
布団の上に投げた。

