「あお…」


「……」


目の前に立つ心を直視できなくて、頭を俯かせた。



「--っ…!」


俯いている私の頬に感じた温もり。
突然のことに驚き、顔を上げた私に待っていたのは



「--会いたかった…」


大好きだった彼の温もりと匂い、そして鼓動。


心臓が壊れてしまうんではないかと思うぼとの鼓動に戸惑う。

大好きだった温もりに酔いしれ、彼の背中に腕を回そうと腕を伸ばした。

カシャンっと音が聞こえ、我に返った私は伸ばしていた手を引っ込め心の胸板を押した。

すんなりと離れた心の顔は寂しそうで、そんな顔を見たくない私は音がした方へ視線を向けた。



視線の先にある白い携帯。

健吾から貰った携帯は、私が心に腕を回すことを阻止したのかもしれない。


地面に落ちた携帯を拾い、着いた砂を手ではらい、コートのポケットへ入れた。



「あお、帰ろう。」


優しい声で私の前に手を差し出す心。

私は心に視線を向けることなく、差し出された手だけを見ていた。


「みんな待ってる」


「……」


--しんちゃんは卑怯だ。


みんな、みんなって…



しんちゃんは?


そんなことを思う私の方が卑怯だ…


「…か、帰っ、て…」


心からも手からも視線を逸らし、口から出た言葉は弱々しかった。