「さて、続きやらないと…」


意識すると同時に緊張し始め、気を紛らわすために家事に没頭した。


健吾が汚した部屋を片付け布団を干し、泰と柳以外の部屋に掃除機をかけ、お風呂を洗い、全ての家事が終わると達成感に溢れた。


家事に没頭し、全てをやり終えてしまった私は再び緊張との戦いで、リビングを行ったり来たりし気を紛らわそうとした。

気が紛れない私は、ガラステーブルの上に置いてあるテレビのリモコンが視界に入り、


「ニュースでも見よう…」


リモコンを手に取り、自分の場所へと腰を下ろした。

お尻に感じるクッションの感触。

お尻からクッションを引っこ抜き、ギュッと胸に抱きしめた。




ピンクでハート型の大きなクッション。
抱きしめられ潰れたクッションを見つめ、思い返すのはこの2ヶ月のこと。

母親に電話をし、家には帰らないこと学校にも行かないことを伝えると、放任主義の母は「はいよ」と言い電話を切った。

あの時、少しは怒ってよって呆れたっけ。


フフッと口から笑い声が漏れた。


健吾と生活し始めて、部屋を汚す度に片付け、泰や柳の分も料理を作りテーブルを囲み談笑しながら食べた。

夜帰ってくるのが遅い両親とは一緒に食べないから、話をしながら食べるご飯は凄く美味しいって実感した。


学校に行かなくなった私を心配する健吾に、


「大学受かったし、もう期末も終わったから行かなくても平気だよ」


と言うと、悲しそうに笑い「そうか」て言った。


健吾はいつまでそんな顔で笑うの?