健吾に睨まれた女達は、後退り私達から離れた。
健吾は離れたのを確認すると、私の手を引き再び歩き出した。
「若田さん、彼女っすか?」
「綺麗な子っすね。」
「若田さんとお似合いっす!」
繋がっていた場所はリビングだったらしく、沢山の男女がたむろしていた。
私は視線を合わせないように、俯いたまま健吾に着いて歩いた。
健吾は男達の声に答えることなく、目的の場所までたどり着くと私の手を離した。
手を離されて淋しいのは、知らない場所できっと心細いから。
後ろから刺すような視線が痛く、私は顔を上げることなく「早く帰りたい」と胸の中で呟いた。
女の嫉妬が怖いのは知っている。
またあんな経験をしなければいけないの…?
パタンと音をたて閉まったドア。
私は、足が棒になったみたいに動けなかった。
「葵?」
閉まったドアが開き、布団を抱えた健吾が部屋から出てきた。
俯いたまま立ち尽くす私に気付いた健吾が、布団を床に下ろし私の顔を覗き込んだ。
ゆっくり顔を上げた私を見て、健吾は顔を歪めた。
「帰るぞ」
優しい声で言い、頭を撫でた。
頷く私に笑顔を向け、手を引き歩き出した。
「えっ!健吾、布団は!?」
早いペースで歩き、引きづられながら歩く私は、健吾の背中に向かって声をかけた。
「おい、あれ隣に運べ。」
近くに座っていた男に、布団を顎で指し命令した。
刺さるような視線は、ドアが閉まるまで感じた。

