「おっ、残念。
けど、後がこわ…-」
恐る恐る振り向くと、
「あっぶねぇ…」
柳が若田の拳を片手で押さえているところだった。
「すぐ、手ぇ出す癖直せよ…」
「はぁ」と溜め息を吐いた柳。
「じゃぁ、足ならいいのかよ」
油断していた柳は、鳩尾に若田の蹴りが入った。
「--ぐっ…」
掴んでいた拳を離し、腹を抱える柳を見下ろし「あめぇな」と吐き、私の手を引き歩き出した。
この数時間で分かったことは、若田は暴力的で"他2名"は変態だと言うこと。
若田はお世辞でもカッコイイとは言えないが、"他2名"は変態じゃなければモテると思う。
…--"他2名"はね。
「ここ、俺の部屋。」
指で指すドアは、右のドア。
「真ん中は泰で、左は陸斗。
襲われたくないなら近寄るなよ。」
若田は、私が頷いたのを確認し、自分の部屋のドアを開けた。
「ちょっと待って!」
部屋に足を踏み入れた若田に、引かれた手を逆に引き返した。
「あ?」
「へ、」
「ん?」
「変なことしない?」
俯き、小さな声で聞く私に
「--今はな。」
私の頭を撫で、手を引き部屋のドアを閉めた。
嫌な汗が背中を濡らし、心臓がバックンバックン暴れだした。

