金髪の君*完結




そーっと近づき手を伸ばす。


「あぁ~!」


後少しって所で逃げられる。
小さい癖に横歩きが早く逃げきる蟹。
岩場の隙間に入り込んで出てこない。
私の様子を伺っているのか少し出ては引っ込んでの繰り返し。


「うぅ~。」


悔しくてうめき声をあげる。


「おい」


蟹に集中していると後ろから声が聞こえ、心の存在を思い出す。


--わ、忘れてた…


慌てて後ろを振り返ると、手を取られた。
驚き戸惑っていると、私の手の平を上にすると


「---えっ?」


鋭い二つのハサミを付けた赤い蟹が乗っていた。
手の平で横歩きをする蟹。
行き場を失い、手の上で行ったり来たりしている。