「しんちゃん、海、行かないの?」
歩幅の違う心に引きずられるようについていく。
「ねぇ、こっちに何かあるの…?
海の家?
しんちゃん聞いてる?」
無視を決め込む心の背中に言葉をかけるが、全く相手にされず諦め口を噤(つぐ)む。
引きずられながら海水浴を楽しむカップルや家族連れを観察する。途中で美穂やアッキー、未来達の存在を思い出し探してみたが見つからなかった。
見つかったら一緒に遊ぼうと思ったのに見つからなくて『残念…』と肩を落とした。
周りを見るのを止めて、心に引かれている手首を見つめる。
--ねぇ、期待しちゃうよ…?
手首から視線を心の背中に向け胸の中で問い掛ける。

