僕の好きな色は、こんなに汚い色だったっけ?

オカシイ、

オカシイ、

オカシイ。



「…どうして?」



血塗れで横たわる数人の男達の傍で。クロさんはケラケラ笑いながら、美味しそうに煙草を口にしている。ご機嫌なクロさんとは対称的に僕は。

赤い色に染まった手のひらを空へ掲げたまま。



「…凌、さん?」



眉間に皺を寄せながら空を見上げていた僕の耳に聴こえる、声。僕の世界を鮮やかに染めてくれる、声。



「…酷い、こんな事ッ!」



振り返った僕に映るのは、怯えた君の顔。

モノクロの世界はモノクロのまま。僕の染まった赤い色だけが、僕の世界に色付いていた。

黒と赤。

どちらも酷く淀んで、汚い色だった。