黒と赤。

君が泣くから、僕の好きな色は嫌いな色に変わった。



「…怖かったです、」

「うん、ごめんね。」

「あんな凌さんは、嫌…。」



その言葉に僕の世界は止まって。藍さんの細い身体を強引に引き寄せて、抱き締めた。



「僕は君が好きだよ。」



だから嫌だなんて言わないで。君が望むならもう、赤い花は咲かせないから。



「…お花屋の凌さんがいい。」



藍さんの身体と同じくらい細い声は、僕の心を急速に染め上げていく。

…どうしよう、嬉しくて死にそう。

僕は藍さんを抱き締めていた腕の力を緩めると、少し潤んだ瞳を覗いた。