「ユイコ!明日ヒマ?」

ドンっと後ろから抱きつかれる。

「んー。明日か~。何すんの?」

後ろを向き、マサキと向かい合う。
男の子らしいカッコいい顔付きに不似合いな制服のリボンとスカート。
マサキは私の一番の親友だ。

「テスト近いし、勉強会やろうよ!ユイコバカだもんね!」
マサキがにやにやしながら言う。

「死んどけ。…んで?どこでやんの?」
機嫌悪げに答える。
するとマサキは親指を立て、

「公民館の自習室!あそこ人全然使ってないから騒ぎ放題~!」
公民館とは私の住んでいるマンションの隣にあって、最近立て直しがあった。

「お前勉強する気ないべ」
呆れて言う。
「てかうちらどっちもバカだから二人で勉強しても意味ないんじゃない?」

すると再びマサキは親指を立てる
「大丈夫!御園生呼んだから!」
御園生というのは万年一位の天才で、かねてよりマサキと噂されていた奴だ。
もちろん二人はそんな関係ではなく、みんなも本気にはしていない。
いわゆるからかわれているだけの仲だった。

「え?御園生一人だけでいいの?」
このままでは御園生がイタい。

「あ、じゃあ呉(ご)も呼んでみる?」
呉は中国人の女の子で彼女は学年の女子で一番頭が良い。

「お前…バカだな。そういうことじゃなくて、男子が一人だけでいいのかって話だよ…」

ようやく気付いたマサキはポンと手をうった。
「あ、そゆことなのね。理解したぜ!じゃあ僕暇人知ってるからそいつにしよう」

暇人…?誰だろ。
「それ誰?」

マサキから出てきたのは私の話したことのない男子の名前だった。


「ん?鈴木。鈴木翔太だよ」