ルウは諦めなかった。
彼女はこの16年間、諦めたことなど無かった。
諦めなければ全てが思うようにいくと思っていた。
でも今回はそうはいかないようだ。

「絶対にいけません。」

ルウはここ何時間かで、
もう少なくとも10回は耳にしている言葉に
あきれはてた。

「私もいやよ。」

こちらのせりふもここ何時間で
何度も聞いたせりふだ。

ルウは二人に鋭い視線を送った。
こんなことしたところで
何の効果もないことは分かっていたけれど。

ルウの視線を受け取った2人は
依然凛とした表情でこちらを見てくる。

ルウは表情をふっと和らげ、
2人をなだめるように言った。

「ねぇ、そんな頭ごなしに反対しなくてもいいじゃない。
156番はとても素敵なところなのよ!
本当に。
自然だって豊かだし」

ルウは言葉をきった。
リルアドもケイも自分の話など全然聞いていなかった。
ルウはため息をついた。

「もういいわよ!
どうせ私の好きなようにはやらせてくれないんでしょ?」

ルウは二人に向かって叫んだ。
くるりと二人に背を向けて、
自分の部屋への階段を派手な音をたてながら駆け上がった。

「ママ!やったわ!
あのルウが諦めるなんて。信じられない。」とケイ。

リルアドはふふ、と笑った。
「やっとだわ。2年目にしてやっと!
あの子が諦めてくれた。これで22番にいけるわ。」とリルアド。

2人は固く手を握り合い、
ぶんぶんと上下に振った。

リルアドは叫んだ。
「あの子のこれで少しは落ち着くはずよ!
もうルウの思い通りにはさせないわ!」

「そうね、ママ。
きっとパパも喜ぶはずよ。」

ケイの声には歓喜がにじんでいるようだった。
勝利の瞬間をしっかりと味わった2人は
早速ギルに報告することにした。


自分の部屋に戻ったルウは
目に悔し涙を浮かべていた。

自分の思い通りに行かないことなど
初めてだった。

この家にきて2年が経つ。
ここの家族はもう自分の思うがままだと思っていた。

「なんてこと!」

ルウはつぶやいた。

「なんてことなの!」