「梨依ちゃん、卓くんと頑張るんじゃなかったの?」


私は、力なく笑った。


「卓には、申し訳ないって思ってる。
けど....」


生きる勇気をくれた人。


共に生きる喜びを教えてくれた人。


傷を理解してくれる人。


卓自身にも深い悲しみがあるのに。


それなのに、私を一番に考えてくれる人。


そんな人は、もう現れない。


「申し訳ないって思うなら行くな。
俺が、こいつを殺してやる。」


まさかだった。


卓がきた。


卓には、連絡しなかったのに。


てか、卓があいつを指さしながら睨んでいる。


それだけで十分だよ。


「おいっ。
お前、何言ってんだよ。
こいつなんかしたか?」


トーくんが、慌てながら止めた。


そうだよね。


知らなかった。


あいつがトーくんの知り合いだなんて。


「梨依のお兄さん?
こいつを庇うの?
梨依を不幸に突き落とした原因の男を。」


卓....


言っちゃった。


言わないでって言ったのに.....


仕方ないか。


興奮状態にある卓を止められるわけがない。