「泣かないんだね」


そう、神谷くんが静かに言った。

笑っていたけど、どこか悲しそうだった。


「僕こそごめんね、いっぱい困らせて」

「…ううん」

「キスしたことは…夏目先輩に言わないよ」

「え?」

「僕が勝手に言ったら、また愛里ちゃん困るでしょ」


神谷くん…

どうしてそんなに優しいの…

そんなに優しくされると…

涙、我慢できなくなるよ…


「その代わり…」


神谷くんは言った。


「今まで通り、友達でいてくれる?」


あたしは笑顔で答えた。


「うん!」


その時、波の音が静かに響いた。