「また連絡しますね」


これからずっと先輩と会えると思うと、別れがずっと楽だ。


「それじゃ…」

「…待てよ」


手を引っ張られた。

そしてすぐに唇にあたたかさを感じた。


「…どうした?」

「いえ…何も…」


あたしの不自然な様子に先輩が気付く。

先輩は黙ってあたしの頭をなでた。


「おやすみ」


それだけ言って先輩は帰っていった。

あたしの心に嬉しさ以外に辛さがあった。

それは神谷くんとキスをしたことを言わない、自分の弱さと…

このまま幸せでいたいという、自分のズルさによるものだった。