「覚えていたのか」
「忘れられないわ!あんな最悪な記憶!」
怒るあたしに、伊吹はふっと笑う。
その表情は、嫌な表情に変わりはないのだけれど、どこか嬉しそうにも見えた。
たぶん、気のせいだろうけど。
「もう二度としないで!てか近づくな、このエロ大魔神!」
大きな声で叫びながら、掃除道具入れに向かう。
掃除が終わってるんならもうさっさと帰る!
こんなヤツと一緒にいたら何されるかわかんないしっ
「外、真っ暗だぞ?」
「別に平気ですからッ」
「可愛くねーやつ」
すみませんね、可愛くなくて!
心の中で悪態をつきながら鞄を手に取った。
すると溜息をつきながら、伊吹も自分の鞄を手に取る。
教室の電気を消すと廊下の明かりだけが目立つ。
薄暗い不気味な校舎の中を、スタスタと歩いた。
「足短ぇな」
「うるっさい!ついてくんなっ」
「下駄箱はどっちだと思ってんだ」
たしかに同じクラスなんだから、同じ方面の下駄箱だけど。
別にわざわざ1メートル程後ろをついてこなくてもいいじゃない!


