「なんでキスすんのって聞いてんのっ」
「……」
こっちはすごい剣幕で怒ってるつもりなのに、伊吹からでるオーラの方がよっぽど怖い。
目が据わってるって!
思わず後ずさりすると、下がった分だけ伊吹は足を進める。
結局変わらない距離のまま、壁際に追いやられた。
「な、なに…」
「隙だらけ」
後ろには壁。
両横には伊吹の手。
前には、伊吹。
冷たい目に金縛りにあったみたいに固まって。
近づいてくる顔を避けれなかった。
ーチュ
小さなリップ音が、静かな部屋に映える。
「俺に何回キスされたと思ってんだよ」
……今のが6回目だよ6回目。
こっちはちゃんと数えてんだよ!
なんて言おうにも、伊吹の雰囲気がそれをさせなかった。


