「あと空手部もよね。むさ苦しくてカッコいいのはいないしー」
はぁ、と溜息をつきながら、絢芽先輩はわざとらしく困った表情を浮かべる。
「あ〜。あんまり漫画化されない題材ですよね。少女漫画なら強い人は大抵空手やってますけどぉ」
続いて玲羅も話に入った。
漫画化されるかどうかで、人の善し悪しを決めるのか?
なんてアバウトな理由。
「あーでもさーでもさー!コンピューター部ってただ脅されただけなんじゃん?」
チャラそうな印象の、端正な顔立ちをした男の子は、にっこりと人懐っこい笑みを浮かべる。
整ってるんだけど、女慣れしてそう。
「ね、妃芽ちゃんもそう思うでしょ?」
全体に向けていたその笑顔を、いきなりあたしに向けてきた。
びっくりして目を丸くする。
なんであたしの名前しってんの!?
「あ、俺椿龍聖(ツバキリュウセイ)ね。優の幼なじみなんさ!」
得意げな表情を浮かべながら、会議中に自己紹介。
玲羅曰く、1−Bであたしたちの隣のクラスだという。
伊吹の幼なじみって…どれだけ勇者なんだ。
そう思ったけれど、とりあえず会議中だから、と、笑顔を返しておくだけにした。
「静かにしろ」
ざわざわと議論が始まる役員の中で、伊吹が一言声を上げた。


