「先輩、ソイツに触らないでいただけますか?」
眉間に皺を寄せながら、絢芽先輩を睨む。
なんか怒ってるし。
書類で変なのでもあったのか?
「あら。そういえば会長自ら入れたんだったわね」
伊吹の目にひるむことなく、絢芽先輩は思い出したように言った。
そして、妖しげに微笑む。
「お気に入りだったの、会長の」
「お気にい…!?」
「いえ、違います。退学は困るというので雑用にしただけです」
あり得ない、と叫びそうになったあたしを止めるように淡々と言い放った。
たしかに、素でしゃべっているところを見てしまって、しかもそのままキスされてしまって。
その後いきなり退学にするけどいいな?、とか言われて。
嫌だと連呼した覚えはある。
「そう。妃芽ちゃん可愛いものね〜」
「…先輩、これ以上小さくなったらどうするんですか?」
溜息まじりに言った伊吹の言葉に、それは困るわね、とあっさり離す絢芽先輩。
それはそれで酷いと思う。
「そろそろ始めるぞ」
先輩が席に戻ると、伊吹は溜息を一つはいてそう言った。


