あたしは高校から、美術で推薦をもらってきたから、まだ知らないことが多すぎる。
なのに生徒会役員にされるなんて、さんざんだ。
「いろいろって、なに」
「んー、なんていうか…
「秀は、諜略みたいなことやってるのよ〜」
玲羅が悩んでいると、絢芽先輩はにっこりと笑ってそう言った。
諜略?
「裏番長みたいなやつ!あるじゃん普通」
ないから。
普通ないから。
「会長の変わりにちょっと部費を整備するとか。反対勢力を潰すとか」
絢芽先輩と玲羅は、平気な顔をして言う。
つまりあたしが優しそうと感じた先輩は、水無月秀(ミナヅキ シュウ)先輩と言って。
計算高い副会長らしい。
怖い人ってことか、結局は。
「おいてめぇら、静かにしろ」
ここでは素を出している伊吹は、一つ息をはくとそう言った。
「あぁーん、もう会議?」
絢芽先輩は心底残念そうに、あたしに抱きつく。
実は首に回された手はまだ解けてなかったのだ。


