「く、くそ……
お頭ぁっ!
助けて下さぁいっ!!」

盗賊のリーダーだと思っていた男が、悲痛な叫びを上げた。


「お頭?
ボスが他に居たのか」

『その通りよ!!』

盗賊の頭のものと思われる声が、天高く響き渡った。
それと同時に、巨大な影が砂丘の向こうから立ち上がる!

「ちっ……
『楽機(がっき)』を持ち出すとは、三下の盗賊のくせにやるじゃないか」

『楽機』とは、いわゆる『ロボット』を指す。
様々な種類の楽機が音界スコアに存在するが、ほとんどの楽機は作業用である。
特にこのカンツォーネは開拓地であるため、作業用の楽機は多数存在する。
ただし、こうした略奪行為などに用いられれば、相手にとって相当な驚異になることは間違いない。


『そこの若造!
よくもウチの可愛い手下どもを痛め付けてくれたな!
だが意気がるのも終わりだ!
この楽機の前では人の力など、虫けらみたいなモンだぜ!』

バードの前に現れた楽機の全貌が明らかとなった。
アコーディオンの形をしたボディーから多重関節の手足が生えたような姿をしており、伸縮する蛇腹によって起こされる風によって砂が巻き上げられている。


(砂嵐の原因はこいつか)

帽子が飛ばされないように手で頭頂部を押さえながら、バードは眼前に迫る巨体を睨んだ。